あらすじ
観欲迷宮——通称、見抜きのダンジョン。
入った者の欲を見抜き、吸い上げて育つ迷宮である。欲の深い者ほど深く潜らせ、深く潜った者ほど帰りたがらなくなる。いつの頃からか迷宮は欲を乗せた配信波を発するようになり、地上の変態たちの執念によって、文字だけは逆向きにも届くようになった。
その最下層、二畳の茶室に、一体の夢魔がいた。
名をノノ。迷宮の仕掛けとして湧かされた、使い捨ての魔物だ。
やがて配信波を手に入れた彼女は、イヤホン越しに千の夢へ忍び込むASMR配信で、迷宮そのものを養うまでに成り上がる。首輪をつけたまま鎖を握る、飼われた主として。
千年、奪う側から一度も降りたことのない夢魔。
その夜、常連の若い冒険者が、夢の中で囁いた。
「ずっと、あなたになってみたかった」
迷宮が揺れ、目を覚ましたノノは、彼の身体の中にいた。
イヤホンから流れてくるのは、自分の声。千年磨いた手管が、自分に向けて使われる。
身体を取り返すため、ノノは男の姿で自分の迷宮を降りていく。見抜きのダンジョンは、嘘を見逃さない。
のちに五感の迷宮を攻略した、英雄として伝説となった夢魔が、はじめて「奪われる側」に立った一夜の物語。
見抜きのダンジョン(本編)
https://kakuyomu.jp/works/2912051605299227339
月間MASHIRO 三題噺短編
https://kakuyomu.jp/user_events/11054822663615738845