あらすじ
俺の人生には、まだ一度も伏線がない。家庭環境は普通。大きな挫折も成功もなく、特別な夢もない。歴史が好きでもないのに歴史研究会へ入り、誰からも強く嫌われていないという理由で、大学三年の俺は副代表に選ばれた。断りたい誘いには笑顔で応じ、一人でいたいくせに、孤独な人間だとは思われたくない。努力や成功を冷笑しながら、社会からは価値のある人間だと認められたい。頭の中では他人を見下し、現実では相手が望む言葉を返す。そうして誰からも嫌われない自分を作ってきたはずなのに、好かれるたびに「好かれているのは本当の俺ではない」と空虚になる。空気を読み、本音を隠し、自分で選ばなかった人生を「日本人らしさ」のせいにする。これは、そんな偏屈な大学生が、歴史研究会の人々や、どこか幸せそうに一人でいる同級生との関わりを通して、自分の小さな選択だけは引き受けようとする物語。