あらすじ
真冬の深夜、寒風が吹きつける熱海サンビーチ。駆け出しのWebエンジニアである間寛一は、10年間交際し結婚を誓い合っていた幼馴染の鴫沢宮を呼び出す。宮が裕福な起業家と婚約したという噂を耳にしたからだった。
高級なカシミヤコートを着て現れた宮の手には、高価なプラチナリングが光っていた。問い詰める寛一に対し、宮は実家の町工場が抱えた1億2000万円もの負債と、病気の母の治療費に追い詰められていた現実を涙ながらに吐露する。相手の起業家はその借金を一括で肩代わりすることを条件に結婚を申し出ており、宮は生き延びるために「愛」ではなく「金」を選ばざるを得なかったのだと叫ぶ。
寛一の純粋な愛や情熱では借金を1円も減らせないという残酷な現実に打ちのめされ、二人の関係は決定的に決裂する。すがりつく宮を寛一が激しく突き飛ばすと、宮は砂浜へと無残に転倒し、上等なコートを夜の黒い砂で汚してしまう。
寛一は手を差し伸べる弱さを捨て、冷淡に宮を見下ろしながら夜空に浮かぶ満月を指差す。「来年の今月今夜(1月17日)、月が曇っていたら僕の涙の雲だと思え」と言い放ち、どんな汚い手を使ってでも相手の男以上の富を築き上げて後悔させてやると復讐を誓う。砂浜に泣き崩れる宮の悲痛な叫びを背に、寛一は二度と振り返ることなく熱海の闇へと立ち去るのだった。