あらすじ
東京で、キラキラした大学生活を送りたい。
そんな割としょうもない理由で京都から上京した大学一年生、相馬隼太は、早くも現実を知っていた。
仕送りは月十万円。
家賃五万一千円を払えば、残りは半分。
飲み会、サークル、服、遊び――憧れの大学生活には、思ったより金がかかる。
かといって、面接を受けて、履歴書を書いて、毎週決まった時間に働くのも面倒くさい。
そこで隼太が始めたのは、好きな時間に働けるフードデリバリーだった。
――そして、ある夜。
彼のもとに、頼んだ覚えのない「仕事」が届く。
やがて隼太が知るのは、一般人には存在すら知られていない、もう一つのギグワークだった。
依頼されるのは、普通の業者では扱えない〈怪異案件〉。
奇妙な落とし物の回収。
帰る場所を失った何かの案内。
人ではない何かの追跡。
いわくつきの場所での確認作業。
壊れかけた小さな結界の応急補修。
報酬はアプリ内ポイントで支払われる。
仕事を選ぶのも自由。
危険度も、推定所要時間も、注意事項も一応は書かれている。
ただし、現場へ行ってみるまで、何がいるのかは分からない。
そしてアプリに示された〈完了条件〉が、案件を終わらせる条件のすべてとは限らない。
霊能力なんてない。
怪異の知識もない。
あるのは、高校時代に長距離走で鍛えた脚と、追い込まれたときだけ妙に回る頭くらい。
怪異を倒す必要はない。
逃げてもいい。待ってもいい。運んでもいい。案内してもいい。
必要なのはただ一つ。
――その案件を、本当に終わらせること。