あらすじ
「お前とは婚約破棄をする」
卒業記念パーティの最中、公爵令嬢セレスティア・ヴァン・アルディナは、婚約者である王太子からそう告げられた。
令嬢への侮辱、嫌がらせ、ワインを浴びせたこと――列挙された悪行は、どれも事実。
だからセレスティアは、優雅に微笑んで認めた。
「ええ。すべて、わたくしがいたしましたわ」
彼女は幼い頃から、物語に登場する“悪役令嬢”に憧れていた。
高慢に。
気高く。
誰にも媚びず。
自ら仕掛けた騒動なら、その後始末まで自分でやり遂げる。
相手を泣かせたなら補償する。
社交界で追い詰めたなら、その先の逃げ道まで用意する。
嫌がらせをした事実まで消すつもりはない。
それでも彼女にとっては、最後まで責任を取ってこその“立派な悪役令嬢”だった。
もちろん、そんな理屈が王太子に通じるはずもない。
こうしてセレスティアは、本当に婚約者の座を失った。
王太子妃候補として積み上げてきた立場も、公務も、王宮での居場所もなくなり、社交界には「断罪された悪女」という評判だけが残る。
――けれど。
「でしたら今度こそ、わたくし自身が殿方を選べますのね?」
落ち込むより先に、セレスティアはそう考えた。
そこへ現れるのは、彼女の高慢さすら面白がって正面から口説いてくる完璧な公爵令息。
異国の文化を語り合える東国の王族。
そして、自分の断罪が本当に正しかったのか疑い始める元婚約者。
さらには、幼い頃から彼女の無茶な計画に付き合ってきた平民の幼馴染からも、
「以前からお慕いしております」
と告白されてしまう。
男性から好意を向けられるたび、内心では狼狽しながらも、外面だけは完璧な悪役令嬢。
だが、彼女はただ自分を愛してくれる男を選ぶつもりはない。
民を大切にできること。
身分で人の価値を決めないこと。
誰かに合わせた借り物ではなく、自分自身の信念を持っていること。
そして――いざという時、彼女が安心して背中を預けられること。
悪役令嬢に憧れすぎて、本当に断罪された公爵令嬢。
今度は誰かに選ばれるためではなく、自分の目で、生涯を共にする相手を選んでいく。
これは後に「烈火の悪女」と呼ばれる令嬢の、断罪から始まる婚活ラブコメディ。