あらすじ
政略結婚から半年。侯爵夫人エリーゼの旦那様ヴォルフラムは、朝食の席でも「ああ」と「そうか」しか言わない無口な人。
エリーゼには、夫に内緒の顔がある。王都の週刊紙で恋愛相談欄を受け持つ、匿名の回答者「ローズマリー夫人」だ。
ある日届いた相談の差出人は「冬の狼」。
『妻と目も合わせられない。今朝も、妻が焦がしたパイを褒めそこねた』
――今朝パイを焦がしたのは、私です。
旦那様は、相談相手が妻本人だと気づいていない。ならば、と回答欄に書いてみる。「まずは朝、名前を呼んで挨拶を」。
翌朝、耳まで赤くした旦那様が言った。「……おはよう、エリーゼ」
回答欄ひとつで旦那様を動かせると知った私は、ちょっとずつ欲張りになっていく。
けれど、優しくされるほど不安になる。この人が優しいのは、私の回答に従っているだけなのでは――?
紙の上の相談と、食卓の沈黙。両方向から近づいていく、不器用な夫婦の甘い話。
最後に旦那様が差し出した、二年前の古い相談の切り抜き。それを読んだら、きっとあなたも最初から読み返したくなります。