あらすじ
王立第三騎士団長ゼノ・アルトハイム、三十歳。戦場では一度も退いたことがない「氷の団長」。
ただし、秘書官エルナの机の前を除いて。
内規第十二条――団長の配偶者は、騎士団に籍を置けない。
彼女の席を守るため、結婚の日に団長を辞す覚悟を決めたゼノが選んだ求婚の手段は、「業務連絡」だった。
「今後の昼食の時間を、君と同一にしたい」
「遺言書の受取人を、君に変更したい」
「官舎の鍵を、君に預けたい」
鉄の秘書官は、そのすべてに「承知しました」と答え、すべてを実行した。
けれど十四回目の「承知しました」の夜、ゼノは気づいてしまう。
上官の求婚は、命令と区別がつかない。彼女は、断れなかっただけではないのか。
ならば、すべて撤回しなければ。
撤回届を差し出した団長に、エルナは淡々と告げた。
「受理できません。理由は三点あります」