あらすじ
「帰りたい……」
平穏な日々を送っていた人間の娘・未亜は、ある日突然、恐ろしい魔王に攫われた。
連れてこられたのは、魔界にある豪奢な『王妃の間』。
けれど、どれほど美しい宝石を贈られても、どれほど贅沢なドレスを与えられても、未亜の願いはただひとつ――人間界へ帰ること。
ところが、絶対君主として恐れられる魔王・ヴェルラウトは、なぜか未亜にだけ異常なほど執着する。
「お前が望むものなら、世界中のすべてを捧げよう」
美しくも冷酷無慈悲なはずの魔王が、未亜にだけ見せる不器用な優しさ。
誰にも屈しない男が、彼女の小さな手を取って、祈るように愛を乞う。
それでも未亜は、彼のもとを離れようとする。
そんな彼女に、ヴェルラウトが差し出したのは、ひとつの約束だった。
「一年だけでいい。俺のそばにいてくれ。――一年経てば、必ずお前を帰す」
力ずくで自分のもとに縛りつけると思っていた魔王が、未亜の小さな指先をすがるように包み込み、プライドを捨てて差し出したのは――一年間だけ、この魔界で共に過ごすという期限付きの約束だった。
恐ろしい魔王に攫われたはずだった。
けれど、彼の孤独と不器用な愛に触れるたび、未亜の心は少しずつ揺れていく。
帰りたい。
そう願っていたはずなのに。
これは、愛を知らない孤独な魔王と、彼に見つけられてしまったひとりの人間の娘が紡ぐ、切なく甘い運命の物語。
――一年後、二人が書き記す結末のページを、まだ誰も知らない。