あらすじ
登場人物
高校二年生の妹、野中灯莉
大学一年生の兄、野中京介
あらすじ
『昔はあんなにスゴかったのに…』
それも二年前までの話。
高校二年までの兄はとてつもなく凄かった。
文武両道。
妹の私が90点のテストで満足している中、兄は当然の100点。
小学生の頃からそうだった。多少のコンプレックスはあるものの、私と兄には決定的な違いがあった。
それは剣道の腕。
素人の私が見ても分かる程だった。足の使い方、俊敏さ、反射神経や判断能力。全てにおいて他よりも優れていた。
小学校の頃から全国大会を優勝し続け、その春夏秋の連覇は高校二年生の三段を取るまで続いた。
それはもう当たり前のようで、高校生になってからは私しか見に行かなくなってしまった。
家庭内の空気感でどこか、両親は冷め始めている事には気づいていた。
父親は代々続く検察官、母親は孤児だった苦労人。
良い意味でキャリア重視、悪い意味で男尊女卑思考の父。傾聴、世渡りが上手な母。
私もうっすらと気づいていたけど、兄は国家公務員ーー検察官を目指すべく剣道を高校二年で辞めた。
兄もその考えを昔から尊重していたせいか、喧嘩一つも起こらず勉強に専念するようになった。
どうしてかは話し声が聞こえるから分かってはいた。高段位を取るのは大人にならないと難しい、つまりは大人になってまたやればいいから。
そんな段数よりも大事な才能があるのに。結局その選択を受け入れた兄も妬ましかった。
それに大学に受かる事がゴールでは無いから。
まず検事になるには司法試験を受ける資格を得る事。それは法科大学院か司法試験予備試験に合格する事。
昔から用意周到な父と兄、比べてその場その場で力を発揮する母と私。
対する私は変化するその状況に口答え一つせず、賛成する事もせず……その話にだけは無関心を貫いた。
強くて憧れた兄も、大会の度に私と一喜一憂してた兄も、結局社会には勝てはしない。いくら才能があって強くても頑張ってもどうにもならない。そんな社会主義な世の中にうんざりしてたから。
そしてそれから二年が経った夏……。
学校帰りの私は友達と遊んだ帰りに街中にある寂れた神社に寄った。
そこから決まっていたはずの私達の運命が少しずつ捻じ曲がっていった……。