あらすじ
地球と異世界が繋がったのが数百年前の話。
魔王が倒されたのが一年前の話。
どうやら世界は平和になったらしい。
そうやって、平和になって一年後。
甘星トウカ、高校2年生の春。
クラスに来た編入生に、全員が驚きを隠せなかった。
月の様に輝く銀髪。
サファイアの様な青く鋭い瞳。
ガラスの様な肌。
人形の様に美しいのに、一切の隙もない。
誰もがテレビで見た、魔王を倒した勇者・ヴィクトリアが、同じクラスになったのだ。
だが、俺にとってはそれだけじゃなかった。
勇者が、俺の住むアパート…それも隣に越してきた。
だが所詮それだけ。接点はない。そう、思っていたのに。
その日の放課後。
隣の部屋から黒煙が上がっている。
様子を見に行くと勇者がフライパンでダークマターを作っていた。
事件後聞いたところ、あれはホットケーキだったらしい。
いや、んなこと言ってる場合じゃない。
脱ぎっぱなしの制服。くしゃくしゃに干された洗濯物。食べた後ほったらかしのプラスチック容器。引っ越し後の畳まずに放置されたダンボールの山etc.……まぁ優しく言えばゴミ屋敷。悪く言やぁ汚部屋。
何故引越し翌日で部屋カオス状態なんだよ。
勇者がこんなんでいいのか。
見て見ぬふりは出来ず、とりあえず掃除開始後すぐ問題発生。
ブラジャーが、出てきた。
淡い桃色の、白のレースが控えめについた、ブラジャー。なんならセットのパンツも。
瞬間、勇者は混乱して暴れ出し状況悪化。
銀色の鬘が空を舞い、晒が外れ、あるようでないような胸の膨らみが顔に当たる。
そこで、一度記憶が途切れた。
さて、ここで俺、甘星トウカは恐らく国家機密レベルの情報を知ってしまったわけだ。
目が覚めたら三途の川でも渡ってるに違いねぇ。そう、思っていた。
目が覚めると、人形の様な少女がこちらを覗いていた。
光に当たって紫っぽく見える黒く長い髪。
ルビーの様な赤く丸い瞳。
変わらないガラスの様な肌。
だが、雰囲気で分かる。
彼女が、勇者ヴィクトリアなのだと。
そして、彼…いや、彼女はこう言った。
「ホットケーキって、作れる?」
「は?」