あらすじ
日本でただ一人、魔法が使えるせいで「化物」と呼ばれてきた女子高生・篠宮澪。
正体が知られたその夜、彼女を異世界へ連れ去ったのは、魔法を失った小さな老人――元・筆頭宮廷魔法使いのゼムだった。
澪は、本人も知らない魔法の国の姫。けれど辿り着いたのは魔力なしの人々が暮らす貧民区で、彼女はそこから、国に捨てられた魔法を拾い集める旅を始める。
「来い。お前の魔力が要る」
子供ほどの背丈で、口が悪くて、甘いものに弱い。そんな老人は、なぜ魔法のすべてを失い、国に捨てられたのか。
この国では、魔法の有無で人の価値が決まる。
「役に立たない」と登録を消された小さな魔法――冷めたスープを温める魔法、破れた服を繕う魔法、迷子の声を届ける魔法。
物や場所に残されたその“捨て魔法”を拾い読むたび、澪は名もない誰かの人生に触れ、生まれて初めて「ありがとう」を受け取る。
魔力のある者とない者の対立。十年前に何があったのか、自分の両親は誰なのか。
捨てられた魔法を一つずつ拾い集める旅の果てに、澪は自分の本当の名前と、王国を守る大結界に隠された真実へ辿り着く。
帰りたい場所がある。それでも、見捨てられない人たちがいる。