あらすじ
日本一面積の小さな市、蕨。
そんな蕨が、この世界では人口五百十二万人の「東京都第二十四区」になっている。
新幹線が停まり、高層ビルが立ち並ぶ巨大都市。
けれど、百五十年前の蕨は中山道の小さな宿場町だった。
では、歴史はどこで変わったのか。
始まりは明治四年、蕨宿。
政治家でも豪商でもない男・勇吉は、人の身体を診ながら暮らす、ごく普通の男だった。
蕨を発展させようとも、歴史を変えようとも思っていない。
ところが、何気なく交わした会話や、酒の席で口にした一言が、本人の知らないところで少しずつ時代を動かしていく。
そして、その妙な巡り合わせは子へ、孫へ、その先の一族へ。
本人たちは何も知らないまま、なぜか歴史の節目に居合わせてしまう。
百五十年後。
五百万人都市となった蕨で整体院を営む子孫・由三も、そんな歴史などほとんど知らず、今日の仕事と今夜の酒のことを考えていた。
なぜ、蕨だったのか。
なぜ、この一族はいつもそこにいたのか。
小さな宿場町から始まる、もう一つの蕨の百五十年。