あらすじ
1888年6月。土砂降りの中帰って来たアルバン・ヘルツは10歳以来足を踏み入れていなかった故郷ゼメリングからミハイル・アルデンホフの訃報を受け取り、急遽旅立つ。ミハイルは手紙をくれたルドルフ・ルース同様、子どもの頃毎日遊んだ友達だったが、彼の父親が殺人を犯し、それ以来除け者にされていた。ミハイルは長く父親の無実を訴えていたが、アルバンはウィーン警視庁の経験からミハイルが正しかったこと、そして真犯人が誰なのか、またどうやって殺したのかを突き止めた。ゼメリングに戻ることは長い影を神の光によって消し去る為の旅であった。
*ゼメリング鉄道……当時帝国内の主要な鉄道「南鉄道」の1つ。鉄道でウィーンから「海への出口」イタリアに入る為にはこのアルプスの難所として知られたゼメリング峠を越える必要があった。かつてない大規模な工事になり、多くの労働者が集められた。これはウィーンの十月革命のきっかけになったリンチ事件を起こした労働者たちをウィーンから引き離す治安対策でもあった。作中のアルフレート・ベスターも大いに危険視されてゼメリングに送られたのだろう。
*ゼメリング鉄道の車掌……当時鉄道の車掌、機関車火夫は徴兵された後、退役された元兵士たちだった。郵便局や役所も同様。その中で車掌職はかなりの上級職だった。
*ラトゥール伯爵……当時帝国の軍務大臣で先述したウィーン十月革命でのリンチ事件の被害者。殺された後は街頭に吊るされ、晒し者にされた。
*グログニッツ駅……ゼメリング峠手前にある駅でここで最低15分は停まって客たちにゼメリング超えの準備をさせるのが義務付けられていた。