あらすじ
歴史怪異小説を三作発表した作家・山影史灯のもとへ、古文書調査者の水城環から一枚の画像が届く。そこには、山影が誰にも見せず削除した文章が、数百年前の筆で書かれていた。盗用か、偶然か、史料の偽造か。二人が三作品の典拠と異稿を調べるほど、公式の完成稿だけが一つの内容へ揃い、比較刷りには別の文章が残る。そして水城の調査文が山影の著作へ取り込まれる一方で、謝辞、コメント履歴、会議の記憶から彼女の名だけが消え始める。刊行まで三週間。山影は、自分の名を守って物語を完成させるか、著者であることの利益を手放して、誰のものとも決められない異稿を公に残すかを迫られる。