あらすじ
西暦2240年。
宇宙物理学者を目指す瀬名樹には、ひとりの恋人がいた。
星の音を聴くことを夢見る、夏目葵。
ある雨の日、二人はいつもの駅前のカフェで、いつものようにコーヒーを飲んでいた。
ただ一つ、いつもと違っていたのは――
「出発の予定が、少し前倒しになったの」
葵が告げた、宇宙探査船アウリガIVへの乗船だった。
行き先は、時空が大きく歪む特異点の近傍。
そして彼女は、樹に告げていない秘密を抱えていた。
やがて地球に届き始めた、葵からの通信。
その穏やかな笑顔の裏側に、不可解なノイズが混じっていることに樹は気づく。
それは、彼女の身体から漏れ出す命の鼓動だった。
彼女が遠い宇宙で一秒を生きる間に、地球では何年もの時間が流れていく。
残された時間は、あまりにも短い。
それでも樹は決意する。
――たとえ時間そのものに引き裂かれても、君の隣へ行く。
止まった懐中時計。
未完成のピアノ曲。
星の彼方から届く謎の旋律。
すべてが一つにつながったとき、二人は時間の境界で再び出会う。
これは、遥かな宇宙を越えて交わされる、
**「最後の数秒」のための恋物語。**