あらすじ
仕事も、結婚も、帰る部屋も、なくなった。
三十二歳の鬼塚立花は、十年勤めた会社の倒産、婚約者の結婚詐欺、アパートの取り壊しに立て続けに見舞われる。地元・広島へ帰る前に、思いきり厄落としがしたい――そう決めて借りたのは、七月の京都にある一軒の町家だった。
人見知りで声が小さく、幼く見える顔も低い背も好きになれない立花。祇園祭の人波に揉まれ、貴船の水に願いを浮かべ、老舗の甘味に心をほどく。その日々に、なぜか水色の裾を引く女の影が現れて……。
祭が始まり、終わるまでの三十一日。
「違う誰かになりたい」と願った女性が、自分のままで歩き出す、全十五話の幻想観光小説。
実在する京都の名所、名店、季節の行事を織り込んだ、心と身体で味わう夏の旅へ。