あらすじ
生まれつき、異常なほどの魔力を持っていたノア。
誰もが彼を、大魔導士になる逸材だと信じていた。
――ただ一つ。
ノアの魔法は、杖の先から一歩も離れなかった。
炎は出せる。
水も出せる。
風も操れる。
でも、飛ばない。
どれだけ膨大な魔力があっても、敵に届かなければ意味がない。
やがて落ちこぼれとなったノアは、杖を直接傷口に当てることでしか使えない治癒魔法を頼りに、細々と暮らしていた。
そんなある日。
王国軍の救護所で、一体の魔物に襲われる。
逃げ場はない。
攻撃魔法は届かない。
追い詰められたノアは、ありったけの魔力を杖先へ叩き込み――
「もう、どうにでもなれ!!」
そのまま魔物をぶん殴った。
結果。
一撃。
ただし。
杖も壊れた。
ノアは知らなかった。
自分が「雑魚」だと思って倒したその魔物が、王国騎士と大魔導士すら仕留めきれなかった強敵だったことを。
そして世間では、正体不明の英雄――
《最強の槌使い》
の噂が広まり始めていた。
「……誰だよ、そいつ」
魔法使いとして生きたいノアと。
なぜか最強の前衛として名を上げていく“槌使い”。
魔法は飛ばない。
杖は壊れる。
金もない。
それでも魔力量だけは、誰にも負けない。
これは、落ちこぼれ魔法使いが杖で敵をぶん殴りながら、意地でも「俺は魔法使いだ」と言い張り続ける物語。