あらすじ
「昨日は、何時にお帰りになったのですか」
「帰ってないよ」
王宮で女官として働いていたテレサは、王立魔導研究所への異動をきっかけに、幼い頃よく遊んでもらったエルマー・デブーリンと十数年ぶりに再会する。
侯爵家の長男として、いつもきちんとしていた少年。
机の上を片づけてから遊びに行き、勉強も途中では放り出さなかった人。
そんなエルマーは今や、結界術の研究で成果を上げる、美しい魔導師になっていた。
……なっていたのだが。
研究を始めると帰らない。食事を忘れる。眠る時間もずれる。そして風呂は、当然のように後回し。
昔よりずっと立派になったところと、どうしてこうなったのか分からないところが、一人の中に同居している。
一方のテレサも、もう侯爵邸へ遊びに来ていた少女ではない。王都で学び、働き、自分の部屋と自分の暮らしを持っている。
昔から知っている二人が、知らなかった十数年を少しずつ埋めていく。
仕事をして、ご飯を食べて、ときどき風呂に入れと言いながら。
これは、そんな二人の恋と、その先の暮らしの話。
※中編予定。完結まで書き切ります。しばらく毎日20時ごろ更新します。