あらすじ
群発地震が続くトカラ列島・宝島。出張所職員の宮地は、南方海底に活火山に分類されていないカルデラが沈んでいることを知っていた。しかし監視機器はなく、ハザードマップもない。制度上、その火山は存在しなかった。
漁師が変色水を発見し、やがて海底火山が噴火する。だが気象庁は噴火警報を出せない。百十一の活火山だけが対象の制度では、この噴火に対応する仕組みがないのだ。避難命令の法的根拠すら生まれない。
宮地は防災無線で呼びかける。「法的強制力のある避難命令は出ません。命の危機が迫っています。どうか避難してください」。マニュアルもチェックリストもない中、現場の人間だけで百三十一人の島民を船に乗せ、噴石の降る海を北へ走る。