あらすじ
四十二歳で人生を終えた元児童福祉職の私が目を覚ますと、前世で読んだ恋愛小説の世界にいた。
転生先は、悪役令嬢本人ではない。
その母親、リヒテンベルク公爵夫人クラリッサだった。
娘のヴィオレッタはまだ八歳。
原作の彼女は、愛情を知らないまま育ち、王太子への執着を深め、十八歳の卒業夜会で断罪される。原作には、その場に母の姿はなかったと書かれていた。
「だったら、悪役令嬢になる前に育て直せばいい」
けれど、目の前の娘は癇癪を起こし、平気で嘘をつき、弟に嫉妬する、扱いの難しい子どもだった。
屋敷を仕切る姑は甘やかしだと眉をひそめる。仕事一筋の夫は娘の教育に関心を持たない。使用人も家庭教師も、すぐには味方にならない。
正しいことを言っても、誰も従ってはくれない。
それでも、母娘の会話や食事、習い事、社交の席をひとつずつ積み重ねていく。
やがて、家庭が変わるほど、原作で悪役だった人々まで違う未来を歩き始めて――。
十年後、運命の卒業夜会で、娘が選ぶ答えとは。