あらすじ
48歳、平凡なサラリーマン・佐伯は、誰にも看取られることなく静かに人生を終えた。
――そう思っていた。
目を覚ますと、そこは三つの月が浮かぶ異世界・魔界。
しかも佐伯は、人間ではなく一匹の悪魔へと転生していた。
「悪魔なら、強いんじゃないのか?」
そう思ったのも束の間。
魔法は使えない。
空も飛べない。
身体能力もたいしたことがない。
戦えば、ほぼ確実に負ける。
魔界では、弱い者は食われる。
そんな過酷な世界で、佐伯が選んだのは――戦うことではなく、逃げることだった。
危険を察知したら逃げる。
強そうな相手には近づかない。
敵の行動を観察し、罠を避け、知恵を使って生き延びる。
人間だった頃には「臆病」「要領が悪い」と思っていた自分の性格が、魔界では思いがけない武器になっていく。
やがて佐伯は、魔界で暮らす悪魔たちにも家族があり、笑い、泣き、誰かを守ろうとしていることを知る。
なぜ自分は魔界に転生したのか。
なぜ魔法が使えないのか。
なぜ古い悪魔たちは、佐伯の姿を見て怯えるのか。
そして――なぜ、自分は死んだのか。
「俺は英雄じゃない。最強でもない」
「それでも……生きたい」
逃げて、逃げて、逃げ続けた最弱の悪魔。
だが、その「弱さ」こそが、やがて魔界の運命を変えることになる。
これは、最強ではない。
勇者でもない。
ただ生き残りたいだけだった一人のおじさんが、誰よりも大きな秘密を背負い、魔界を変えていく物語。
――最弱悪魔のおじさん、今日も逃げます。