あらすじ
貧民街の修理工房で働く少年、エド。彼が十五歳の成人儀礼で授かった固有技能は、誰も欲しがらない《遺品修復》だった。
壊れた武器や魔道具を直せる。ただし、修復した瞬間、その道具の持ち主が死ぬ直前に見た記憶が流れ込んでくる。しかも、見た記憶の代償として、エド自身の記憶がひとつずつ消えていく。ある夜、エドは父の処刑後に廃棄された短剣を修復する。
そこで聞こえたのは、十年前に反逆者として処刑された男の声だった。「違う。俺は王を裏切っていない」短剣に残っていた記憶には、父の工房の印と、王都の地下へ続く扉が映っていた。父は本当に罪人だったのか。
なぜ王国は、死者の遺品を恐れているのか。
そして、真実を追うほどに、自分の母親の顔さえ思い出せなくなっていくエドは、何を守るのか。これは、壊れた道具を直しながら、失われた真実と自分自身を取り戻していく、遺品修復士の成り上がり譚である。