あらすじ

高校二年生、十七歳の桜庭美月には、一度見た人の顔をほとんど忘れないという特技があった。ある日、担任の小野寺孝明から紹介されたのは、警察庁の極秘アルバイト。監視映像に映る人物を見て、過去に見たことのある顔を探すだけ。危険な仕事ではなく、時給は千三百円。美月は軽い気持ちで引き受けるが、映像の中から不審な男を発見したことで日常は一変する。 元警察庁職員を名乗る謎の男・神崎蓮から渡された二十五年前の集合写真。そこには「SB計画参加者」と記され、さらに「この中に、君の本当の父親がいる」という言葉が残されていた。しかも美月は、二十五年前の写真に写る黒崎冬馬という男を、現在の警察庁でもまったく同じ若い姿で目撃していた。 警察庁の久世玲奈、謎めいた神崎、死んだはずの黒崎、そして美月の父・隆司。それぞれの証言から、警察庁がかつて極秘に進めていた「SB計画」の存在が浮かび上がる。それは、人並み外れた顔・声・行動などの認識能力を持つ人間を捜査や諜報活動へ利用する計画だった。第一世代には十五歳の少女・藤崎由梨もいた。彼女は任務中に死亡し、計画は終了したことになっていたが、実際には形を変えて継続されていた。 さらに美月は衝撃の事実を知る。藤崎由梨は母・由紀子の姉、つまり自分の伯母だった。そして美月自身も特殊能力を受け継いだ第二世代「SB-17」として、生まれたときから監視されていたのである。しかも記録上の実の父親は、担任教師の小野寺だった。小野寺は美月の母へ計画的に接近したものの、やがて本当に彼女を愛し、誕生した美月をSB計画から守るため、隆司へ託していた。 事件の核心には、さらに恐ろしい秘密があった。SB計画の真の目的は特殊能力者の育成だけではなく、人間の記憶や人格を別人の脳へ移す「人格転写」だった。二十五年前と同じ姿の黒崎も、実は死亡した黒崎の記憶を別の肉体へ移された人間だった。そして計画を生み出した研究者・三浦恭一は、美月の祖父・桜庭宗一郎の身体へ自らの人格を移して生き続けていた。 完全に近い記憶保持能力を持つ美月を「最高傑作」と考える三浦は、老いた宗一郎の身体を捨て、美月の身体へ人格を移そうとする。転写装置に拘束された美月は、自分の人格が消される恐怖と闘う。その過程で三浦の記憶が逆流し、二十五年前、由梨が事故で重傷を負った際、三浦が自らの研究を守るため救命せず、死なせた真相を知る。美月は「私は道具じゃない」という由梨の言葉を自分自身の核として三浦の人格に抵抗し、仲間たちの助けを得て分離に成功する。 しかし事件は終わらない。SB計画には第三世代が存在し、幼い子どもを含む三十二人が研究対象となっていた。しかもその一人は、美月の親友・高橋夏帆だった。夏帆は美月を監視するために友達になったことを告白するが、長い学校生活の中で任務を超えて本当の友情を感じるようになっていた。 美月たちは第三世代研究施設へ突入し、計画責任者・桐生雅臣と対峙する。桐生は三十二人を救う条件として美月にSB計画を引き継ぐよう迫るが、美月は拒絶。「その二択、両方嫌です」と、自分たちの力で子どもたちを救出する。 さらに、美月を超える能力を持つ謎の少女「SB-X」こと水城凛の存在も判明する。凛は人の記憶を消す特殊能力を持ち、美月を抹殺するよう条件付けされていた。しかし小野寺の働きによって凛も救出され、SB計画はついに公の捜査対象となる。 事件後、美月は普通の高校生活へ戻る。夏帆とも改めて友達として歩き始め、凛にも初めての友達ができる。そして玲奈から再び警察庁のアルバイトを持ちかけられた美月は、今度は自分自身の意思で条件を交渉する。 かつて「悪い奴ほど美少女が好き」という言葉は、少女を犯罪者への囮として利用するSB計画の冷酷な思想だった。しかし美月はその意味を変える。 「悪い奴ほど美少女が好き。だから、美少女のほうから見つけてやります」 誰かの道具でも、国家の「最高傑作」でもない。一度見た顔を決して忘れない少女・桜庭美月は、自分の能力をどう使うかを自分で決め、新しい人生へ踏み出していく。

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カクヨム
カクヨム2026/10/01
  • 現在の作品悪い奴ほど美少女が好き