あらすじ
王冠を求めて死んだ実在の王は、異世界でも欲を捨てなかった。
一〇六六年、スタンフォード・ブリッジ。
ノルウェー王ハーラル・シグルズソンは、イングランド王の座を求めた戦いで喉を射抜かれる。
次に目を覚ましたのは、見知らぬ島の浜だった。
五十一歳。
若返ってはいない。
古傷も、戦場を渡り歩いた身体も、王として生きてきた記憶もそのまま。
ただし、国も、軍勢も、金もない。
そんなハーラルを拾ったのは、アヴィという一人の船乗りだった。
口は軽いが海では腕が立ち、自分で改造した快速船を誰より愛している。
そして、その愛船はいま、武装船団に拿捕されていた。
恩は返したい。
あの船にも乗ってみたい。
ならば、取り戻せばいい。
王と船長は手を組む。
船を奪い返し、海へ出る。
働いて金を稼ぎ、仲間と飯を食い、見たこともない世界を進んでいく。
海を渡る巨大な街。
海中に築かれた国。
水平線の向こうへ落ちていく海。
そしてハーラルは、また欲しがる。
船を並べる港が欲しい。
もっと多くの人間を率いたい。
そして――この世界には、王を持たない国がある。
何も持たず異世界へ流れ着いた五十一歳の王が、
もう一度、人を集め、土地を取り、王冠へ手を伸ばす。
これは、すべてを失っても欲深さだけは失わなかった男の、二度目の国獲りの物語。