あらすじ
県立巴陵(はりょう)高校の二年、綴喜湊(つづきみなと)には趣味がある。壊れたものを直すことだ。
軋む椅子、閉まらない窓、映らないプロジェクタ、鳴らない始業チャイム。頼まれてもいないのに工具箱を提げて直して回る。壊れたまま放置されているのが気持ち悪いから、それだけだ。
四月半ば、その湊が、クラスの中心にいる白瀬咲良(しらせさくら)に告白される。
翌日、それが罰ゲームの嘘告だったと、教室の全員の前で明かされた。仕掛けたのは生徒会長・神鳥谷蓮(ひととのやれん)。「工具持ってウロウロしてる奴が本気にすると思わなかった」と笑いが起きた。
湊は怒鳴らなかった。ただ、その日から工具箱を開けるのをやめた。
やめただけだ。だが五月、プロジェクタが死に、放送室が落ち、二年棟の空調が一台ずつ止まり、体育祭の得点板が全校の前で停止した。誰も直せない。この学校は、六百人ぶんの設備を一人の生徒の無償労働で回していたのだと、壊れてから順番に知ることになる。
そこへ、一人の三年生が現れる。
一ノ瀬累(いちのせるい)。元生徒会副会長。穏やかで、有能で、湊にこう言う。「君は一円ももらってない。それは搾取と言うんだよ」。
彼は湊のために動き出した。校内の惨状を撮り、編集し、外に出した。加害者を名指しで晒し、母校を燃やした。同時に近隣校と地域から有償の修理依頼を取ってきた。湊は初めて、自分の手に値段がつく世界を知る。
一ノ瀬は正しい。言っていることは全部事実だ。仕事もできる。
ただ、彼は止まらない。関係のない生徒まで焼き、湊の名前で勝手に交渉し、嘘告の実行犯・白瀬咲良を執拗に追い詰める。湊が止めると、優しく笑ってこう言う。「君は優しすぎる。だから僕がやる」。
嘘告した咲良は、償いのつもりで一人で修理を覚えようとして、ネジ山を潰し続けている。
咲良の親友・鴇田沙耶(ときたさや)は、あの日笑わず、止めもしなかった女で、そして絶対に謝らない。「謝ったら、あの日のわたしが可哀想になる」と言って、真正面から湊に近づいてくる。
敵は誰も直せない。味方は止まらない。
これは、無償で働いていた男が見積書を覚える話であり、
自分を助けようとする人間を、どうやって止めるかの話である。
※本作は生成AIを利用して執筆しています(AI本文利用)