あらすじ

金曜日になると、それまでの一日を忘れてしまう朝倉透は人と深く関わることを避けていた。どうせ忘れてしまうのなら、誰かと親しくなる必要なんてない。 そうして人との間に距離を置き続けていた透にとって、神社だけが、誰にも干渉されずにいられる場所だった。いつものように、神社に訪れたある日、神社で一人の少女と出会う。 「ここは……檜村ではないのですか?」 古びた着物をまとい、現代のことを何も知らない少女と出逢う。彼女が口にした村は、何十年も前に消えた地名だった。戦時中の時代から神隠しによって現代へ迷い込んだ少女には、帰る場所がある。けれど、その方法は分からない。 厄介ごとに巻き込まれたと思いつつ、仕方なく少女を自宅に置くことにした透は、彼女を守ろうとするあまり、外出を禁じる。クラスメイトの束縛する彼氏の話をふときいた際に疑問を感じる。 「……僕は、彼女を助けているのか。いや軟禁しているのではないか?」 初めて自分の行動を見つめ直した透は、ようやく彼女個人を認識し始め、自分から会話するように……。ふと気になっていた、自分に対する気持ちを尋ねると…… 「出会えたのがあなたでよかった」 思いがけないその言葉をきっかけに、透は初めて、目の前にいる一人の人間として向き合おうとする。 温かな食事を喜び、何気ない一日を幸せだと笑う澄。彼女と過ごす中で、透は少しずつ人と関わることを覚え、クラスメイトのとも言葉を交わすようになっていく。 やがて、澄を元の時代へ帰す方法が見つかる。けれど、それには透が失いたくないものが待っていた。それでも透は、目の前にいる大切な人の望みから逃げないことを選ぶ。たとえ、自分がその先で何を失うことになったとしても。 これは、過去に縛られ、人と向き合うことを諦めていた少年が、一人の少女と出会い、目の前の現実と向き合う物語。

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カクヨム
カクヨム2026/10/01
  • 現在の作品過去を忘れる僕と、今を生きる君