あらすじ
推しに「喰われたい」と願う少女は、どこまで壊れていくのか。
高校二年生の祈野真依は、家庭では義父との不和に晒され、学校でも居場所を見失い、コンビニで働きながら日々を消耗していた。怒鳴り声と沈黙が支配する家、誰にも必要とされない教室、同じ作業を繰り返すだけのレジの前。そんな彼女にとって唯一の救いは、インディーズバンド「Crimson Cat」のボーカル・Masakiの存在だった。彼の声に触れている間だけ、自分が生きていると実感できる。やがて真依の想いは、「愛されたい」から「喰われたい」という歪んだ願望へと変質していく。
ライブに通い続ける中で、Masakiがファンに手を出しているという噂を知りながらも、真依はそれを“特別に選ばれた証”として羨望する。選ばれた誰かと、選ばれない自分。その差を埋めるように、彼女の願いはさらに過激になっていく。しかし現実は残酷で、彼女の想いは軽くあしらわれ、自身の立場の惨めさを突きつけられる。家庭でも居場所を失い、追い詰められていく中で、真依の価値観は少しずつ崩れていく。
さらに、Masakiを取り巻くスキャンダルによって、彼の存在そのものが崩れ去る。唯一の支えだった“神様”が消えたとき、真依の中に残ったのは、満たされなかった欲望と、行き場を失った祈りだけだった。
すべてを失った真依は、現実に押し戻される。だがその喪失は、彼女の中に決定的な変化を残していた。
喰われることに救いを求めていた少女は、やがて自分自身の在り方を問い直す。
これは、推しに救いを求めた少女が、自らカリスマへと変貌していく物語である。