あらすじ
十五の儀で引いたのは【栞】。読みかけの場所を覚えていられる、それだけの外れスキルだった。
外れを引いた者は表に出さない。どこにも書かれていない慣例で、王弟の娘は屋敷の一室から十年出されなかった。その十年で覚えたのは、帳簿と筆跡と織り目、そして人の声の高さ。
従弟の失踪で王位が回ってきた令嬢は、読み上げる速さで横領を、運筆の癖で偽の署名を、織り目の数で産地の偽りを暴いていく。七日で三人の高官が職を辞した。
使ったのはすべて、部屋から出されなかった十年のほうだ。彼女がまだ知らないのは、土の踏み方だけだった。