あらすじ
「ねえ、3組の白石雪乃って知ってる? 清楚ぶってるけどさ」
二学期の初日、昼の食堂。背中のテーブルから降ってくるその噂話を、白石花乃は一字一句覚えている。
笑うタイミングも、最後の「やばー」の伸ばし方まで。
噂の的は、数分違いで生まれた双子の姉・雪乃。
いつもにこにこしていて、言い返さない。家では「優しい子」で通っている人。
「すぐカッとなる子」の花乃とは、顔よりも中身のほうがずっと似ていない。
前の人生の花乃は、姉を庇って噂の相手を問いつめ、停学処分まで持ちこんだ。
姉には「極端すぎる」と言われ、父からは「少しは雪乃を見習え」。
やがて噂の矛先が自分へ向いたとき、路地で何があったかを知っている姉は、見たままを話してはくれなかった。
11月の終わり、花乃は校舎の屋上から落ちた。
今、トレーの上のうどんは、まだ湯気を立てている。
箸は置かない。誰から聞いたのかも、今回は訊かない。
噂に言い返さないのは、お姉ちゃんが自分で決めたこと。
校門で「妹が証人です」と肩を押されても、夜中にベッドの端で「ねえ。……鷹野くんってさ、私のこと好きだと思う?」と訊かれても、花乃は姉の選択に口を挟まない。
共通テストまで、あと134日。
自習室のノートの最初のページには、漸化式が並んでいる。
全9話。
小説家になろうにも掲載します。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。