あらすじ
バズりたい心霊配信者。幽霊を憎む理系大学生。そして、失踪事件を追う同級生に、半ば強引に引きずり出された、安楽椅子探偵の高校生。
接点などなかったはずの三組の男女が、同じ夜、たったひとつのふざけた広告に応募した。ポップな「Webクエスト」を装う、謎の不動産会社――ライジング・オカルト地所。差し出された同意書の片隅に、たった一行だけ、狂った条項が紛れていた。
『契約者は、"主観時間の延長"が生じる場合があることに、同意するものとします』
――時間が、延びる? 全員が、鼻で笑った。そんなもの、あるわけがない、と。
葦北の古民家では、泣き声が、家の中を歩く。神奈備の洋館は、訪れた者の記憶を、書き換える。湖畔にそびえる巨石の豪邸は、時間そのものを、歪ませる。三つの事故物件で待っていたのは、怪異の顔をした、あまりにも人間くさい"悲しみ"だった。
しかも、その悲しみは――彼らひとりひとりが、ずっと胸の奥に隠してきた古傷を、狙い澄ましたように抉ってくる。まるで、この夜のためだけに、あつらえられていたかのように。
離れているはずの三つの部屋が、少しずつ、繋がりはじめる。気圧のログも、水底に沈んだ暗号も、やがて、たったひとつの答えを、指し示していく。
そこは、神の山などではない。
記憶を奪われた者たちが、今もさまよう、哀しい牢獄だ。
そして、彼らはやがて、思い知ることになる。
最も恐ろしいのは、怪異ではなかった。それは、人間の、果てしのない愛だったのだと。
――民俗ホラー × ロジカルミステリー × 感情サスペンス。