あらすじ
明治十六年。山の村から徴兵された与助は、生まれて初めて、白い飯を腹いっぱい食える暮らしを手に入れた。
けれど兵営では、その白い飯を食う者から順に足が腫れ、胸を押さえて死んでいく。軍医は「湿気のせいだ」と言い、上官は「贅沢病だ」と笑う。
村では、そんな病気は聞いたこともなかった。村の飯は、麦と稗だったからだ。
うまい飯が人を殺すなんて、誰が信じる。信じてもらえないなら、数えるしかない。
のちの日露戦争で、陸軍は二万を超える兵を脚気で失う。これは、その誤りの片隅で、名もない新兵が書き続けた帳面の物語。