あらすじ
三度目の東京大学不合格。
二十一歳を目前にした松賀清水は、人生を始めることができないまま、両親の家を出て古びた六畳一間のアパート「仏陀荘」で暮らし始める。
彼にとって大学とは、単なる進学先ではなかった。
東京大学に合格すれば、浪人生活が終わる。
浪人生活が終われば、人生が始まる。
そう信じて、勉強だけを続けてきた。
ところが、木々が青々とする季節。ある夜から、奇妙な出来事が起こり始める。
午前三時になると、怪異が現れるのだ。
とうとう勉強どころでなくなってしまった清水は、夜の町を歩き始める。
そして、曇った空の下で北斗七星を探す。
見えないものを、ただそこにあると信じながら。
そんなある夜、彼は三百円のうどんを売る、不思議な店に出会う。
そこで彼が置き忘れた一冊の単語帳と、午前三時に現れる怪異。
それらを追うように、清水の日常は少しずつ現実から外れていく。
人生を始めることのできない一人の青年のモラトリアムがだんだんと変化していく。