あらすじ
精霊と魔法が当たり前に存在する世界。
人々は火の精霊に明かりを灯させ、水の精霊から水を得て、風の精霊に荷車を押させる。魔物が現れれば冒険者が剣を取り、傷を負えば治癒魔法を頼る。
そんな世界で、五歳の少年カイルは目を覚ました。
自分の名前も、家族のことも、ここへ来るまで何をしていたのかも分からない。
けれど、不思議なことに、この世界のことだけは知っていた。
水差しを見れば、それが何のための道具なのか分かる。
水の精霊が宿っていれば、放っておいても水が湧くことも知っている。
どうして知っているのかは、自分でも分からない。
成長するにつれ、カイルは少しずつ自分が周囲の人間とは違うことに気づいていく。
古い文字を見れば、読めないはずなのに意味が分かる。
見たことのない魔法を、なぜか懐かしく感じる。
誰も疑問に思わない精霊の仕組みに、どうしても引っかかる。
それでも、カイルは普通に生きていく。
学校へ通い、友人を作り、失敗し、喧嘩をして、魔法を覚える。
やがて彼は冒険者となり、広い世界を旅することになる。
王国の外へ。
人の住まない森へ。
魔物の跋扈する土地へ。
そして、誰も詳しく語ろうとしない古い遺跡へ。
旅を続けるほど、カイルの中に眠る「何か」は少しずつ形を持ちはじめる。