あらすじ
過労で倒れた獣医師・カイが目を覚ましたのは、魔獣が「戦力か害獣」としか扱われない異世界だった。 傷ついた魔獣は、治療されることなく処分される。それが、この世界の常識だ。
魔法は使えない。ただ、首には聴診器が下がっている。 カイは、脚の折れた魔獣ソラを、村人の手から救い出し、診察する。
「診てから、決めます」
小さな村に診療所を開き、魔獣を診る日々が始まる。 薬草師のミレーヌ、鍛冶屋のドルン、元騎士ガルド、助手になった少女リナ。 難産、寄生虫、老いた猫の最期。そして、森で広がる原因不明の病。 やがて、魔獣管理官ヴェルナーが、「規則」を携えて現れる。
――治せるものは治す。治せないものは、せめて穏やかに。 獣医師による、異世界動物病院の物語。
この世界の魔獣は、人間用の回復魔法が効かない。体の仕組みが違うからだ。 だからこそ、誰も魔獣を「治せる」とは思っていなかった。
けれど、体の仕組みを知っている者なら、見えてくるものがある。 熱の有無、歯茎の色、腸の音、フンの中の小さな虫。 診て、考えて、確かめる。その積み重ねが、一頭の命を、一つの村を、変えていく。
動物が好きな人も、お仕事ものが好きな人も、どうぞ、診察室へ。