あらすじ
世の中には、ごくまれに「呪われている人」がいる。
ただし、その呪いは――だいたい、しょうもない。
靴の中に小石が入る。
写真を撮ると必ず半目になる。
自分が並んだレジだけ遅くなる。
好きな人の前でだけ、大事な言葉を噛む。
そんな「本人は困っているけれど、他人から見ればどうでもいい呪い」を専門に扱うのが、久世直人の営む小さな“呪い屋”だった。
新人の白石千尋は、次々と持ち込まれる奇妙な相談に呆れながらも、直人とともに呪いの条件を調べ、依頼人たちの悩みに向き合っていく。
呪いは消せない。
取り除けば、知らない誰かへ移る。
そして転呪されるたび、ほんの少しだけ強くなる。
捨てるのか。
工夫して付き合うのか。
それとも、そのまま抱えて生きるのか。
答えはいつも、呪われた本人が決める。
ところが、しょうもない依頼を追ううちに、直人たちは何十年、何百年と人から人へ渡り続けてきた「古い呪い」の存在に気づき始める。
それでも今日も、呪い屋の扉は開く。
「相談があるんです」
「どうぞ」
「靴下が……片方だけなくなるんです」
世界を滅ぼすほどではない。
けれど本人にとっては、死ぬほどしょうもなくて、死ぬほど困る。
これは、そんな呪いと一緒に生きる人たちの物語。