あらすじ
神の声が聞こえない。魔力もない。
誰もが生まれつき持ち、やがて道具へ姿を変える「神言石」も、十八になった今なお石ころのまま。
辺境の村で「無属性」と笑われて育ったゼンは、それでも腐らなかった。
使えないなら鍛えればいい。
分からないなら調べればいい。
観察し、考え、試し、その結果を日記に記す。
そうして彼は、規格外の肉体と、自分の頭で答えを探す習慣を身につけてきた。
そんなある日、魔王軍が王都へ侵攻するとの布令が届く。
志願兵には、戦果に応じた報酬が出るらしい。
「親父の借金が返せるかもしれない」
あまりにも現実的な理由で戦場へ向かったゼンは、家族として暮らす地魔法使いのフィアと組み、敵軍を観察する。
どこを潰せば軍が崩れるのか。
何を使えば最短でそこへ辿り着けるのか。
魔力がないなら、知恵と筋肉を使えばいい。
指揮官級だけを狙い撃ち、敵陣を突き破り、ついには総司令官のドラゴンまで撃破したゼンを待っていたのは、思いもよらない褒賞だった。
「おぬしは、今日から勇者である」
なりたくもなかった勇者に祭り上げられ、国家の英雄として担ぎ上げられていくゼン。
だが、彼は考える。
――勇者という立場なら、今まで平民には届かなかった場所へ手を伸ばせるのではないか。
神の声とは何か。
魔力はどこから来るのか。
魔王とは何者なのか。
誰も当たり前すぎて問わなかった世界の仕組みへ、
神の声が聞こえない男が、自分の頭と筋肉で挑んでいく。