あらすじ
二十八歳の夏、田川和夫は恋人・俊美の妊娠から逃げた。俊美は命を絶ち、娘・ひなたは十五歳で逝った。二十五年後、過去を突きつけられた和夫は「逃げない」と決める。児童相談所の面談、区役所の保護者欄への署名、猫柄のノートを選びに行く土曜日──小さな現実を毎日引き受けることが、男の贖罪の実体だった。
妻・恵子は怒り、一年考え、「一緒に背負う」と選んだ。息子・蓮斗は父の弱さを恐れながらも、逃げなかった父の背中を受け継いだ。施設育ちの少女・ノブは「望まれなかった」生い立ちを誇りに変え、やがて全国に声を届ける講演家になる。そして和夫の病床に届けられた小さな手のひらが、ついに「ひなた」という名を呼ばれた。
懺悔とは言葉ではない。誰かの未来が光ることで、初めて証明になる。