あらすじ
帝国に併呑され、地図から姿を消した旧公国。
その街には今も、削られた紋章や撤去された碑文とともに、かつて銀で栄えた国の記憶が残っていた。
侯爵令嬢シルウィアは、傷ついた古い指輪を携え、一軒の工房を訪れる。
文字のない銀看板を掲げたその店の主は、セヴェリン。
無愛想な中年の修繕師は、傷を消すのではなく、残したまま美しく繕う男だった。
彼の手によって指輪が本来の輝きを取り戻すにつれ、シルウィアの周囲にも異変が起こり始める。
鈍色だった髪。
隠されていた瞳。
そして、彼女自身も知らない出生の秘密。
一方、帝国では密かに「銀髪の娘」が捜されていた。
なぜセヴェリンは、彼女の指輪を見て表情を変えたのか。
またなぜ彼は滅びた国のものばかりを繕い続けるのか。
磨かれた銀が映し出すのは失われた過去か、それとも選び直す未来か。
滅びた国の秘密を知らない令嬢と、過去を捨てきれない修繕師。
これは、傷を消すのではなく、傷ごと未来へ持っていくための物語。