あらすじ
十月。
夏の名残と冬の気配が入り混じる季節の中で、主人公は少しずつ自分の感情を制御できなくなっていた。
仕事、人間関係、責任、誰かのミスや言い訳。普通なら見過ごせる小さな違和感まで拾ってしまう彼にとって、世界は時々、あまりにも情報が多すぎる。
正しいことを言いたい。
間違っているものは間違っていると言いたい。
けれど、自分の正義が誰かを傷つけることも知っている。
ある夜、感情のままに書いた長い文章を送る寸前で、彼はすべてを消した。
「良い時と悪い時ほど、口を紡いだ方がいい」
何ひとつ解決しないまま、彼は世界から少しだけ離れることを選ぶ。
翌朝も、問題は残ったまま。
それでも窓から差し込む光だけは、どうしようもなく綺麗だった。
救われたのか、逃げただけなのか。
その答えを決めないまま、彼は今日だけ世界を待たせる。