あらすじ
タイムマシンがあれば歴史上の偉人を連れてくることが出来ます。連れてくるなら誰がいいですかね。難しいです。ピカソを連れてきて新作を描いてもらったとして意義があるとは思えませんし……。他の偉人も、んー、やはり難しいです。どんなジャンルのどれほどすごい人であっても「だからどうということはない」と私は思ってしまいます。今の時代に相応しくないというか、何者であってもたいしたことは出来ないでしょうし、その人にとっても知らない時代で生きるなんて迷惑な話です。ある個人とある時代が奇跡的な噛み合わせの良さを実現し、結果すばらしい状況が発生する、……ちょっと想像できないですね。
『可愛いストーブの時間 数学の悪魔』のあらすじを紹介します。
2075年に生きる若い数学者がタイムマシンで連れ去られるところから物語は始まります。連れ去られた先は2197年の世界です。2075年9月9日に世界戦争が起こった歴史があります。数学者はその戦争で命を落とした人物です。享年13歳。ライフワークとして進めていた数学者の研究は中途で止まります。中途であってもなおその内容は凄まじく、理論の方向性は人類にとって未知の領域を模索するものでした。タイムマシン完成の偉業を成し遂げた物理学者は、タイムマシン理論の根幹にその「中途の研究」のエッセンスを据えていました。つまり数学者が残した「研究ノート」が無ければタイムマシンは完成していなかったわけです。そして2197年、マシンの性能向上の限界にぶつかった物理学者は研究ノートを記述した数学者本人に頼ることを決意します。数学者は2197年の未来世界で自身の研究のつづきを進めることになります。大きな使命が二つあります。一つは、研究を進めてタイムマシン開発に貢献すること。もう一つは、2075年の戦争の悲劇をなんとかすること。数学者は考えます。判断します。選択します。
大雑把には、こんな感じです。まあ、私が書いた小説の中での話ですので。本来なら想像もつかない事態のはずが、私の思惑によって無理矢理成立しています。今作ではタイムマシンの開発陣が登場します。前作の『可愛いストーブの時間』ではタイムマシンユーザーがふんわりと理論を説明しています。詳細を知らされていない立場なのでそれが自然な流れだったんです。開発陣は違います。理論を知っています。そしてがっつり語ります。学術的な記述に対しては「そういうものがあるんだな」で片付けていただいてかまいません。本作は小説です。まるで学術論文を精読するかのような姿勢は不要です。ただし、登場人物たちのちょっとした言動や出来事に対して「なにかひっかかる」と感じた場合は「どういうことだろう」とじっくり考えてみるのも一興かと思います。さーっと読み流してしまうのはもったいない、……執筆者の私はそう考えています。作中には良質な思考体験の機会をたくさん散りばめています。可能な範囲で味わってほしいと願っています。
さらに続編を書く予定です。未着手です。いつ執筆するか決まっていません。今回は、『可愛いストーブの時間』および『可愛いストーブの時間 数学の悪魔』の二作品でほどよくきりがいいと判断し、公開させていただきました。みなさんに楽しめる読書体験を提供出来ているなら、執筆者として嬉しく思います。