あらすじ
30歳、独身、飲食店勤務。
特に成功したわけでも、壮絶に失敗したわけでもない。そんな普通の俺が、ある朝突然――透明人間になった。
鏡にも映らない。カメラにも映らない。服を着れば服だけが歩く。
だったらもう、真面目に生きる必要なくないか?
高級ホテルのビュッフェでタダ飯。
女湯へ潜入。
完売したアイドルライブをステージ脇から鑑賞。
高級ホテル、スポーツ観戦、閉館後の水族館。
そのうち日本を飛び出して海外まで。
誰にも見えない身体を手に入れた俺は、今まで我慢していたことを片っ端からやってみることにした。
――ただし、透明人間も万能ではない。
足音はする。物を持てば浮いて見える。濡れれば足跡が残る。人混みでは誰も避けてくれない。
しかも、姿が消えても家賃も税金も会社からの連絡も消えてくれなかった。
そして俺が遊び回った先々に残した奇妙な痕跡は、やがてネットで一つの都市伝説として語られ始める。
「日本に、本物の透明人間がいるんじゃないか?」
本人だけは、今日もそんなことを知らずに遊んでいる。