あらすじ
この町では、満月の夜だけ、死者が生前に暮らした家へ帰ってくる。
二十歳の美緒は、亡くなった母・佳代をほとんど毎月呼び、同じ食卓を囲んでいた。
味噌汁の濃さを叱られ、仕事の話をし、次の満月を待つ。それは悲しい儀式ではなく、美緒にとって楽しみな夜だった。
ところがある満月、佳代は言う。
「次の満月は、私を呼ばないで」
呼ばれれば帰りたい母と、会えるなら会いたい娘。
生きる側には次の満月までの日々がある。けれど死者には、帰還と帰還のあいだの時間がない。
会わないことは別れなのか。
会い続けることは、愛なのか。
月に一度だけ死者が帰る町で、母と娘が「一緒にいない時間」を選び直す、全5話の物語。