あらすじ
「利益にならない物件の担当は、もう要らないんだよ」
大手不動産グループの管理会社で十二年、住人のために頭を下げ続けてきた久我原修、三十四歳。リストラされたその日に届いたのは、亡くなった祖母が遺した築五十二年の木造アパート「ひだまり荘」の鍵だった。
空室八つ。雨漏りあり。固定資産税の滞納三百八十万円。九十日以内に払えなければ競売になる。
途方に暮れて地下倉庫の扉を開けると、そこにあったのは青く光る石の階段――誰にも登録されていない私有ダンジョンだった。
相続と同時に目覚めたスキルは《大家》。
契約した入居者は、敷地内(地下ダンジョンを含む)で能力が跳ね上がる。
入居者が家賃を払うたび、大家には経験値と修繕ポイントが入る。
「敷金礼金ゼロ。家賃は月一万円、魔石払いも可」
クランの寮を追い出されたE級配信者。呪いのせいで誰にも部屋を貸してもらえない治癒師。脚を壊されて捨てられた元S級の盾役。国から追われる迷宮生まれの女。
行き場を失った探索者たちを住まわせるたび、アパートは直り、ダンジョンは深くなり、大家の俺は勝手に強くなっていく。
ボロアパートの地下で、E級が一撃でC級を倒した切り抜きが拡散されたのは、最初の家賃を受け取った翌朝のことだった。
俺をクビにした会社も、彼女たちを捨てたクランも、今さらこの土地を欲しがっている。
悪いが、入居審査は大家の俺がやる。