あらすじ
「家賃更新料、残り30万円。期日まであと25日」
映像制作会社をクビになり、底辺配信者として食いつないでいたカメラマン・志摩タクト。
金も、戦闘力も、高価な探索スキルもない。
彼に残っていたのは、傷だらけの中古カメラと、映像制作の現場で叩き込まれた異常な観察眼だけだった。
命がけで潜ったダンジョン。
オークに追い詰められたタクトの配信画面に、奇妙な赤文字が現れる。
《右の壁叩け。死角がある》
それは、人間には見えない「怪物たちのコメント」だった。
だが、怪物の言う「安全」は人間の安全とは限らない。
筋肉の動き、視線、光の反射、足音。
タクトは撮影者として培った観察力を頼りに、怪物たちの意図とダンジョンの死角を読み解いていく。
やがて彼は、人間の探索者には撮れない場所から、誰にも真似できない映像を撮影できることに気づく。
最新機材を揃えたA級配信者が同じ場所に立っても撮れない。
だが、戦えないタクトには撮れる。
その事実が、彼自身の「市場価値」になっていく。
「俺をただの自撮り棒と思うな」
怪物たちからの撮影依頼。
人間企業からの契約。
そして、自分の技術を買い叩こうとする配信者たち。
タクトはやがて、自分自身で撮影料金を決める。
『撮影依頼は一回十万円から受ける。ただし、画角を決めるのは俺だ』
戦えば最弱。
撮ることなら、誰にも負けない。
中古カメラ一本から始まる、ダンジョン撮影成り上がり譚。