あらすじ

「レモン水売りの分際で、魔法学院に口を出すな」 王立魔法学院の議事堂で、筆頭教授ヴィクトール・ラングレーはそう言い放ちました。十年間、王都の井戸三百十二本を毎朝五時に巡り、濁度も湧出量も一本残らず測り、記録し続けてきた給水雑務係リディア・ウェルナー——その職は、彼の《広域浄化》ひとつで「消滅」したのです。 しかしリディアには、前世の記憶がありました。日本の地方公務員、水道局浄水課勤続十二年。会議で正論を言って通ったことなど、ただの一度もない人生でした。 「そうですか。——では、どうぞ。ご自由に、濁った水をお飲みくださいませ」 十年分の帳面は燃やされました。けれど彼女は知っていたのです。記録は、二重に残すものだと。 派手な魔法は使えません。魔物も斬れません。できるのは、水を測って、書いて、残すことだけ。 やがて王都の井戸は静かに濁りはじめ、誰も気づかなかった地下水脈の異変が牙を剥きます。そのとき人々が縋るのは、笑い者にされた作業着の女が積み上げた、三百十二冊の数字でした。 怒れば怒るほど、声が柔らかくなる。それが彼女の悪い癖。 これは、誰にも褒められなかった地道な仕事が、都市を救う物語。ざまぁと、ほんの少しの不器用な恋を添えて。

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小説を読もう2026/09/30
  • 現在の作品「レモン水売りの分際で魔法学院に口を出すな」と追放されましたが、王都の井戸三百十二本を十年浄めていたのはわたくしですので、どうぞご自由に濁った水をお飲みくださいませ