あらすじ
この国の魔法は、王都語で唱えるもの。
地方の訛りは「詠唱の乱れ」と呼ばれ、学院では矯正の対象になっている。
雪深い北の村で育った十六歳のサヨは、二年かけて覚えた王都語を頼りに、王立詠唱院の入学試験へ挑んだ。
けれど結果は、豆粒ほどの火がひとつだけ。
落ち込んで帰ろうとした彼女は、冷えた手をあたためようと、いつもの癖で村の言葉をつぶやいてしまう。
――ばっちゃ、火ぃ貸してけれ。
その瞬間、消えたはずの蝋燭に灯ったのは、誰にも消せない二百年ものの火だった。
命令する王都語と、お願いする方言。
訛りを笑われた田舎娘の言葉が、王立詠唱院の「常識」をじわじわ溶かしていく、ぬくい学園ファンタジー。