あらすじ
父の葬儀で、久世燈子は新聞の死亡記事が一字残らず黒く滲んで見えることに気づく。『お父様は借金を苦に自死した』――その記事も、親族の言葉も、燈子には世界についた誤植に見えた。家と印刷所を奪われかけた彼女の前に現れたのは、怪異を喰らう代償に記憶を失う侯爵・九条朔臣。彼は燈子を見て『ようやく見つけた』と告げ、印刷所を守る条件に契約結婚を持ちかける。
人々に信じられた文章が現実を塗り替える帝都で、二人は新聞、戸籍、婚姻届に潜む怪異を追う。ところが朔臣の手帳には、本人も覚えていない言葉が残されていた。『重要。久世燈子という女性を探せ』
嘘を正せば人は救われるのか。忘れられても、二人は互いを選び直せるのか。黒い文字の正体と、十四年前の白紙新聞事件へ迫る恋愛ファンタジー。