あらすじ
東海道の宿場町、関宿。
若い喜助とおきぬは、街道沿いに小さな旅籠を開いた。
喜助は、泊まりに来た旅人の顔を描く。
おきぬは、その人から聞いた話を、似顔絵の横に一言だけ残す。
江戸へ奉公に向かう少年。
伊勢参りの夫婦。
旅の途中で出会った名もなき人々。
時には、後に歴史に名を残す人物も、ただの旅人としてこの宿に泊まっていく。
旅人は一夜を過ごし、また旅へ出る。
けれど、その人がここにいたことは、宿帳に残る。
やがて旅籠は子から孫へと受け継がれ、時代は江戸から明治、大正、昭和、平成、そして令和へ。
旅の形も、人々の暮らしも変わっていく。
それでも、一つだけ変わらない。
「あなたがここに来てくれたことを、覚えておきたい」
一冊の宿帳に刻まれた、二百年の人の営み。
これは、旅人と、旅人を迎え続けた人々の物語。