あらすじ
ミナミの喧騒から外れた法蘭寺横丁の片隅。
ゴールデンバットの煙とロシアン珈琲の香りが漂う古い洋館に、そのオフィスはあった。
リンゼイ・チコウスキー――極東シベリアの秘密都市で肉体に「邪神の魔石」を埋め込まれた過去を持つ、弱冠二十歳のロシア系美女探偵。
敗戦国にはならなかったものの、GHQの影が色濃く残る1950年の大阪・大浪。
一晩に数十人もの宿なしが煙のように消える、安時川の不可解な大量失踪事件。
現場に遺されたのは、人間のものではない巨大なヒキガエルの足跡だった――。
ヒロポン禍に狂うサーカス団『異形のファンタズマ』、
ショゴス細胞を操るマッドサイエンティスト、ハーバート・ウェスト、
そして裏で糸を引く「這いよる混沌」ナイアルラトホテプの悪趣味なゲーム。
すべてを奪われ、ボロボロになりながらも、リンゼイは白銀のマスカレードを纏い、ホンダ・ドリームC70のエンジンを咆哮させる。
たとえその戦いが、絶対的な邪神の掌の上のエンターテインメントに過ぎないとしても。
「チャールズ……キミなら、どうする?」
煙草の煙の向こう、凍てつく大浪の街を見下ろす探偵の、孤独でビターなクトゥルフ・ノワール、ここに開幕。