あらすじ
――来年は中学生
携帯電話の画面に残っていた、お母さんからのメール。
「来年は中学生!」
あの頃の私は、それを何の疑いもなく読んでいた。
来年も、お母さんがいる。
中学生になった私がいる。
その先には、高校生になった私がいて、大学生になって、大人になって。
お母さんは、その全部を見てくれる。
それが当たり前だと思っていた。
だから私は、お母さんに手紙を書いた。
二年生の頃、インフルエンザで一、二ヶ月くらい休んでいた私を、お母さんはすごく心配してくれた。
そのことを思い出して、
「ありがとう」
と書いた。
そして、
「今度は、二度とご心配をかけないようにがんばるよ。」
と書いた。
私は、いい子になりたかった。
お母さんに心配をかけたくなかった。
中学生になったら、もっとしっかりしたかった。
だから最後に、
「お母さんにてまをかけないようにがんばるよ。」
と書いた。
あの頃の私は知らなかった。
お母さんに手間をかけないことが、いい娘になることじゃなかったなんて。
病気になって心配をかけてもよかった。
泣いて困らせてもよかった。
何度だって「お母さん」と呼んでよかった。
もっと甘えてよかった。
もっとわがままを言ってよかった。
だって私は、まだ十二歳だったから。
そして何より――
お母さんは、来年もいると思っていた。
メールには、こう書いてあった。
「今年の目標にしよう!!」
「来年は中学生!」
「一年なんかアッという間に過ぎてしまうよ!」
私はその「来年」を信じた。
お母さんも、きっと信じていた。
二人で一緒に迎えるはずだった、春。
中学生になった私。
制服を着た私を見て笑うお母さん。
「大きくなったね」って言うお母さん。
私は、そんな未来を何も疑わなかった。
――卒業式の三日後。
その未来が、突然なくなるまでは。